2001年の日本のオペラ概観
2001年は、104演目、184プロダクション、552公演以上のオペラが日本で上演されました。
月別の演奏回数を下グラフに示しました。5月、8月が少なく、7、10-12月が多い特徴が示されています。
2000年に上演されたオペラの上演数ベスト10は次の通りでした。
順位 | 作曲家 | 作品名 | 製作数 | 公演数 |
1 | モーツァルト | 魔笛 | 7 | 46 |
2 | ヴェルディ | 椿姫 | 6 | 26 |
3 | モーツァルト | フィガロの結婚 | 12 | 23 |
4 | ヴェルディ | アイーダ | 1 | 21 |
4 | レハール | メリー・ウィドゥ | 3 | 21 |
6 | モーツァルト | ドン・ジョヴァンニ | 6 | 19 |
6 | バーンスタイン | キャンディード | 1 | 19 |
8 | ロッシーニ | セビリャの理髪師 | 1 | 17 |
9 | モーツァルト | コシ・ファン・トゥッテ | 8 | 16 |
9 | J・シュトラウス | こうもり | 6 | 16 |
9 | プッチーニ | トゥーランドット | 4 | 16 |
9 | プッチーニ | トスカ | 3 | 16 |
2001年の日本のオペラ上演は、不況にも関らず非常に活況を呈していたといってよいでしょう。演目数、制作数、公演数とも史上最高だったと思います。外国オペラでは、メトロポリタン歌劇場とフィレンツェ歌劇場、フェニーチェ歌劇場それにバイエルン国立歌劇場など合計12団体が来日公演を行いました。国内の各オペラ団体も精力的に活動を行いました。特に二期会が創立50周年を迎え、3度の本公演を行ったことが印象に残ります。
ベスト10の内訳は、モーツァルトが4作品、ヴェルディ、プッチーニが2作品、それに、「セヴィリアの理髪師」、「メリー・ウィドウ」、「こうもり」といつもの顔ぶれです。例外は、バーンスタインの「キャンデード」。これは、2001年に、東京、名古屋、大阪で集中的に上演したため、ランク・インしました。
モーツァルトの4作品の内、「魔笛」は、『プラハ国立歌劇場』と『ブルノ歌劇場』の二つのチェコの歌劇場が取り上げ、オペラシアター・こんにゃく座の「魔法の笛」や、市民オペラなどで合計46回と数多く演奏されました。「フィガロの結婚」は、『バイエルン国立歌劇場』が取り上げましたが、それ以外は大学や市民オペラが多く、年間の制作数が12と本年1番でした。「ドン・ジョヴァンニ」は、新国立劇場で取り上げたほか、『プラハ国立歌劇場』といくつかの大学が取り上げています。
例年制作数が決して多いとはいえない「コシ・ファン・トゥッテ」が数多く演奏されました。『小澤征爾音楽塾』が取り上げた他、市民オペラや大学など8団体もが上演致しました。
ヴェルディでランクインしたのは「椿姫」と「アイーダ」。「椿姫」は、『フィレンッエ歌劇場』と『フェニーチェ歌劇場』の二つのイタリアの歌劇場が取り上げた他、『ポーランド国立歌劇場』もこの演目で全国を回りました。他に国内3団体が取り上げています。一方「アイーダ」は、『プラハ国立歌劇場』が上演致しました。
「メリーウィドウ」は、『ソフィア国立オペレッタ劇場』が全国ツアーを行ったほか、仙台と神戸のオペラ団体が取り上げました。「こうもり」も市民オペラでの上演が多い作品で、二期会の公演の他、市民オペラ団体等が五種類の上演を行いました。
「セビリャの理髪師」は『バーデン市立劇場』の舞台。「トゥーランドット」は新国立劇場の新シーズンの幕開けを飾ったほか、Bunkamuraが取り上げました。「トスカ」は、『レニングラード国立歌劇場』が持って来た他、新国立劇場の『高校生のためのオペラ鑑賞教室』で取り上げられました。
さて、2001年を特徴づける大きな言葉は、ヴェルディイヤーということです。ヴェルディ没後100年のメモリアル・イヤーということで、日本でも多数のヴェルディ作品が上演されました。取り上げられた作品数が13、27プロダクション、総公演数は110でした。下の表に概要を示します。
主催団体 | 演目 | 上演数 |
プラハ国立歌劇場 | アイーダ | 21 |
びわ湖ホール | アッティラ | 2 |
新国立劇場 | イル・トロヴァトーレ | 6 |
フェニーチェ歌劇場 | シモン・ボッカネグラ | 3 |
サントリーホールオペラ | ドン・カルロ | 3 |
〈友〉音楽工房 | ドン・カルロ | 1 |
東京大学歌劇団 | ドン・カルロ | 1 |
新国立劇場 | ドン・カルロ | 6 |
北九州シティオペラ | ナブッコ | 1 |
新宿区民オペラ | ナブッコ | 2 |
新国立劇場 | ナブッコ | 6 |
東京二期会オペラ劇場 | ファルスタッフ | 3 |
東京都民オペラソサイエティ | マクベス | 2 |
藤原歌劇団 | マクベス | 3 |
新国立劇場/二期会オペラ振興会 | リゴレット | 6 |
メトロポリタン歌劇場 | リゴレット | 5 |
東京オペラ・プロデュース | 王国の一日 | 2 |
東京オペラシアター | 仮面舞踏会 | 2 |
新国立劇場 | 仮面舞踏会 | 5 |
関西歌劇団 | 仮面舞踏会 | 2 |
ポーランド国立歌劇場 | 椿姫 | 13 |
文京区民参加オペラ | 椿姫 | 1 |
伊丹市民オペラ | 椿姫 | 1 |
フィレンツェ歌劇場 | 椿姫 | 5 |
フェニーチェ歌劇場 | 椿姫 | 4 |
コレギウム・ムジクス | 椿姫 | 2 |
東京オペラ・プロデュース | 二人のフォスカリ | 2 |
新国立劇場が5作品、藤原歌劇団、二期会が「マクベス」、「ファルスタッフ」を、そして、外来オペラ団も、METが「リゴレット」、フェニーチェが「シモン・ボッカネグラ」と「椿姫」、フィレンツェも「椿姫」を取り上げました。以上の中で、特に注目すべきは日本初演の三公演でしょう。即ち、びわ湖ホールでの「アッツィラ」、東京オペラ・プロデュースの「王国の一日」と「二人のフォスカリ」です。ヴェルディの代表作とはとても言えない、「ガレー船時代」の作品が初演されたことは、非常に良かったことだと思います。
以上以外の注目すべき公演は、順不同ですが、
新国立劇場の本公演は、1月「トロヴァトーレ」、2月「リゴレット」、3月「ラインの黄金」、5月「仮面舞踏会」、6月「蝶々夫人」、7月マスネ「マノン」、9月「トゥーランドット」、11月「ナブッコ」、「ドン・ジョヴァンニ」、12月「ドン・カルロ」でした。
日本の作品の上演は、30作品で66回でした。特に注目されるものは、東京交響楽団の黛敏郎「古事記」の上演と、NISSAY OPERAが取り上げた、三木稔「源氏物語」の上演でしょう。
オペラシアター・こんにゃく座の活動、中村透の地方を舞台にした作品「キジムナー時を翔ける」と「日光」の東京での上演も記録しておくべきですね。
ちなみに「音楽の友」誌2002年二月号に掲載された「2001ベストコンサート33」に挙げられたオペラ上演は、
2位 サイトウ・キネン・フェスティバル松本/ヤナーチェク「イエヌーファ」
3位 メトロポリタン歌劇場/サン・サーンス「サムソンとデリラ」
5位 パーセル・クワルテット・オペラ・プロジェクト/モンテヴェルディ「オルフェオ」
6位 新国立劇場/ワーグナー「ラインの黄金」
8位 フィレンツェ歌劇場/プッチーニ「トゥーランドット」
8位 藤原歌劇団/ヴェルディ「マクベス」
12位 バイエルン国立歌劇場/ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
12位 メトロポリタン歌劇場/リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」
22位 飯森泰次郎指揮東京シティ・フィル/ワーグナー「ワルキューレ」
22位 東フィル・オペラコンチェルタンテ/ウェーバー「魔弾の射手」
でした。
他に、日本オペラ界の話題としては、関西二期会が第25回音楽の友社賞を受賞したことが挙げられます。
日本オペラ界に関連した訃報は、日本を代表する作曲家でオペラ作品も数多い團伊玖磨さんが5月17日、中国・蘇州市で死亡したこと。NHKのイタリアオペラ公演を指揮した、アルベルト・エレーデが春頃91歳で死亡したこと。 日本でも何度もオペラを指揮したジュゼッペ・シノーポリが4月20日、オペラ「アイーダ」を指揮中に倒れ、心筋梗塞で死亡したこと。日本を代表する名指揮者・朝比奈隆さんが12月29日に死亡したこと、が挙げられます。
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