2021年NHK交響楽団演奏会ベスト3

第1位:5月サントリーホール演奏会 広上 淳一 指揮

曲目: チャイコフスキー(マカリスター編曲) 弦楽四重奏曲第1番 作品11より第二楽章「アンダンテ・カンタービレ」(弦楽合奏版)
  サン・サーンス   ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61
    ヴァイオリン独奏:白井 圭
  尾高 惇忠   交響曲〜時の彼方へ〜

 

第2位:4月東京芸術劇場演奏会 鈴木 雅明 指揮

曲目: ハイドン 交響曲 第95番 ハ短調 Hob.I-95
  モーツァルト   オーボエ協奏曲 第1番 ハ長調 K.314
      オーボエ独奏:吉井 瑞穂
  シューマン   交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」

 

第3位:10月Aプログラム ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮

     
曲目: ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
      ヴァイオリン独奏:レオニダス・カヴァコス
ニルセン 交響曲 第5番 作品50

次点:11月Cプログラム ファヴィオ・ルイージ 指揮

ベスト指揮者:広上 淳一
ベスト・ソリスト:レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)

選択の理由

 2021年は、いろいろな意味で特別な年になりました。まず一つは、COVID-19の世界的流行の継続です。NHK交響楽団は年間27プログラムの定期演奏会を行っているわけですが、2020-21シーズンは全部中止となって定期会員券は全て払い戻し、その予定の日には、感染防止に配慮したプログラムを行こととなりました。私は従来は、定期演奏会のうちAプログラムは定期会員として、Cプログラムはフリーの観客として演奏を聴いていたのですが、2020-21シーズンに関しては、全部一回券販売となったために、従来は定期会員以外はチケットがとり辛かったサントリーホールに何度も通わせていただきました。

 もう一つ特別な年になった理由は、NHKホールの改修です。N響のフランチャイズであったNHKホールは2021年春より1年間の予定で大改修を行っています。それで従来NHKホールで行っていた定期演奏会は、一年間限定で池袋の東京芸術劇場で行われるようになりました。東京芸術劇場はNHKホールよりも1000席程度小さいホールですから自由席の販売がなくなり、指定席の販売だけとなりました。私も21-22シーズンについてはAC両プログラムの定期会員として通うことにいたしました。またCプログラムは、従来の標準的なコンサートの二時間という枠がなくなり、一回のコンサート時間が60-80分、途中休憩なしの演奏会となりました。

 そういう中で、私は本年19回の演奏会を聴くことになりました。

 なお、この19回の演奏会は当然ながら全て感染に配慮したものとして行われたため、大人数の奏者が必要となる大規模な曲の演奏はなかなか復活できない様子です。従来は毎年2-3曲は必ずやっていたマーラーの交響曲は聴くことはありませんでしたし、弦楽器の構成も従来は第一ヴァイオリンが16人の16型で行われていたわけですが、今年は16型に戻ることはなく、1プルト少ない14型で演奏されました。また外国人指揮者の招聘も難しく、日本人指揮者の演奏が多かったのも特徴です。そう言えば、男性奏者はかつては燕尾服で演奏していたのですが、昨年の特別演奏会開始以降はブラックスーツ姿に変更になり、本年もそこは戻りませんでした。

 さて、個々の感想のまとめです。

 1月は、ファンホ・メナ、沼尻竜典、鈴木優人の演奏を聴きました。メナはコロナ禍で中止となった2020-21年シーズンの定期演奏会で1月から指揮する予定でアナウンスされており、プログラムも発表になっていたのですが、そのプログラムで演奏しました。2021-21シーズンで、中止になる前の定期演奏会の予定の指揮者プログラムで演奏できたのは、このメナが唯一です。沼尻はオール・ラヴェル・プログラム、鈴木はメインにブラームスの一番を持ってきました。

 2月は、尾高忠明と下野竜也。尾高のシベリウス1番の土臭さと、下野のライン交響曲のライン川の流れを思わせるような演奏が素敵でした。また下野と共演した清水和音の「皇帝」は「オヤジ」を感じさせる演奏で、ピアノストの年の取り方がいいなと思いました。

 4月は、三ツ橋敬子のオペラアリア集。森谷真理と福井敬との共演。鈴木雅明のハイドン、モーツァルト、シューマンというオーケストラの王道のようなプログラム。そして大植英次のシベリウスの2番を中心とするプログラム。N響初登場の三ツ橋、円熟の鈴木、22年ぶりの大植とそれぞれ個性の出た演奏でした。

 5月は広上淳一のみ聴きました。メインの尾高惇忠の「時の彼方へ」が実に素晴らしい演奏で、感動しました。

 6月は、井上道義、下野竜也、パーヴォ・ヤルヴィの三人。井上の彼らしい「エロイカ」、 下野の下野らしいマニアックなプログラム(フィンジ、ブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエム、ブルックナーの0番)も良かったですが、ほぼ1年半ぶりに来日した首席指揮者のヤルヴィがニールセンの「不滅」がやはり印象に残ります。

 9月から定期演奏会が復活です。9月もヤルヴィから。オール・バルトークプログラムを聴いたのですが、流石ヤルヴィと言うべき見事なものでした。

 10月は現役最長老のブロムシュテット。2年ぶりにN響の指揮台に上りました。94歳とは思えない若々しい音楽づくりでした。Aプログラムのニールセンの5番も、Cプログラムのドボルザーク8番も本当にみずみずしい音楽で素敵としか言いようがありません。

 11月は次期のN響首席指揮者となるファヴィオ・ルイージ、それに沼尻竜典。当初はルイージが全プログラム指揮の予定だったのですが、来日外国人の待機期間の関係でAプログラムが沼尻の代演となりました。フランツ・シュミットの交響曲2番という滅多に演奏されることのない曲(私も初聴でした)がメインでアナウンスされていたわけですが、沼尻はルイージのプログラムをしっかりと引き継いで演奏しました。素晴らしいです。またルイージのロマンティックは上品な演奏で良かったです。

 そして12月世界的なオミクロン株の流行で、来日外国人の入国制限が再開され、制限前に入国していたガエタノ・デスピノーザがAC両プログラムを演奏しました。Aプログラムはシェーンベルグの「浄夜」がメインで、Cプログラムは「展覧会の絵」。代演で振ったはずの「展覧会の絵」の方が私には刺さりました。

 さて、ベスト3の選択ですが、例年通りトーナメント方式で絞っていきましょう。

 1月はどれも物凄くいいという感じではなかったのですが、ひとつに絞るとすれば鈴木優人の演奏でしょうか。

 2月はどっちもよかったのですが、下野の流麗さと清水のおっさん臭さでこっちをとりましょう。

 4月は鈴木雅明。他の2人と音楽の格が違います。

 5月は広上淳一一人ですが、この演奏を残さない選択はありません。

 6月はヤルヴィ、9月もヤルヴィ。どっちかひとつと言えば6月を採りたい。

 10月のブロムシュテット。どりらも素晴らしかったですが、どちらかを選ぶとすればAプログラムでしょうか。

 11月はルイージ、12月は代演で振られたCプログラムの方が私に刺さりました。

 ここから4つに絞ります。1、2月は下野でしょう。4,5月はどちらも捨てがたいです。6月ヤルヴィ、10月ブロムシュテット、11月ルイージが残すべき候補。下野と4月代表鈴木、5月代表広上の演奏を考えると下野が最初に落ちると思います。ヤルヴィもいいでしょう。これで、4月鈴木雅明、5月広上淳一、10月ブロムシュテット、11月ルイージが残りました。この4回の演奏会はどれも捨てがたいですが、自分の曲の好みを踏まえてルイージを次点にします。残った三演奏会は順番を付けにくいですけど、全部1位とかにするのは嫌なので、聴いた直後の感想の熱を踏まえて、1位を5月広上、2位を4月鈴木、3位を10月ブロムシュテットにします。ベストソリストは10月にブロムシュテットとブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏したレオニダス・カヴァコスが図抜けているように思いました。

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2021年12月30日記

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