目次
2025年1月18日 第2028回定期演奏会 指揮:トゥガン・ソヒエフ
2025年1月24日 第2029回定期演奏会 指揮:トゥガン・ソヒエフ
2025年2月8日 第2031回定期演奏会 指揮:ペトル・ポペルカ
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指揮:トゥガン・ソヒエフ
曲目: | ショスタコーヴィチ | 交響曲第7番ハ長調 作品60「レニングラード」 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:郷古、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:村上、チェロ:辻本、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:客演(新日本フィルの岡 北斗さん)、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:客演(東京フィルの高橋臣宜さん)、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、テューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)
弦の構成:16型
会場:NHKホール
感想
今年も新年はソヒエフから始まりました。昨年1月定期のソヒエフの演奏もとても素晴らしかったのですが、今回の演奏も素晴らしいもので大いに感心いたしました。
「レニングラード」という曲は、私がクラシック音楽を本格的に聴き始めた50年前は「ソ連のプロバガンダの作品」、「派手だけど駄作」という評価が一般的で、オーケストラの演奏会でもあまり取り上げられることはなかったと思います。でもこの実際聴くと第一楽章の「戦争の主題」の繰り返しのいかにもプロバガンダ、という面はあるものの、第二、第三楽章の内面的な美しさもあり、確かに、ショスタコーヴィチが言うように、「スターリンによって破壊され、ヒトラーによってとどめを刺された」レニングラード、ファシズムの愚かさとソビエトの社会主義という名の全体主義の愚かさを描いたということなのでしょう。
ソヒエフは、この音楽の持つ「国家」というものの愚かさを、N響のアンサンブル能力の高さを使って丁寧に和音を組み立てることで、整然と聴かせてくれたと思います。
第一楽章の「戦争の主題」は、ラヴェルの「ボレロ」との類似性も言われるところですが、竹島さんの小太鼓のクレッシェンドに乗ってどんどん楽器の組み合わせを変えていく音楽の盛り上がり方がきっちりとしていて、音楽がも通せる感じが素晴らしい。そこから到達したレクイエム(ファゴット水谷さんが素晴らしいソロを披露)がまた聴きごたえがある。第一楽章だけで、約30分かかりますが、くっきりしているけど濃厚で、これだけでも十分と思われるほどでした。
第二楽章はスケルツォということになっていますが、おどけた感じは全くないどちらかといえば懐かしさを感じさせる部分。そのしみじみとした部分と鋭く切り替わる金管の咆哮が素晴らしい。
第三楽章は緩徐楽章。バロック音楽的コラールがきっちり組み立てられていて、丁寧に表情を作っていくところが見事です。第四楽章はいかにもプロバガンダ、という音楽なのですが、ソヒエフは単なるプロバガンダの「勝利」の音楽にはしない。「勝利」の裏にある犠牲や悲しみを感じさせるように演奏して、盛り上がっては終わりましたが、ただそれだけではない味を感じました。
ソヒエフはロシア人ながら、ロシアのウクライナ侵攻に対してアンビバレントな立場で西側に残ったわけですが、その自由主義国家的立場とも権威主義的国家の立場からも一歩身を引いて考えるとき、ショスタコーヴィチの隠喩を「自分事」として感じなくてはいけなかったでしょう。そのため、「レニングラード」のような一見プロバガンダで唯盛り上げられることも可能な作品を、複眼的に見て、、第二、第三楽章を丁寧に描くことによって、ショスターコーヴィチのナチズムとソ連の批判のような二重の意味をくっきりと見せてくれたのではないかと思います。名演でした。
指揮:トゥガン・ソヒエフ
曲目: | ストラヴィンスキー | 組曲「プルチネッラ」 | |
ブラームス | 交響曲第1番 ハ短調 作品68 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:中村(翔)、チェロ:辻本、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:𠮷村、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保、
弦の構成:14型(ストラヴィンスキー)/16型(ブラームス)
会場:NHKホール
感想
徳永次男さんがコンサートマスターを退任した1997年にコンサートマスターに就任し、その後、第1コンサートマスター、特別コンサートマスターとして長年N響の音楽を支え続けてきた篠崎「マロ」史紀さんがこの3月契約を終了して、N響を去ることになりました。足掛け29シーズンに渡ってN響の音を支えてきたベテランも若い世代にバトンを引き渡します。N響定期公演としてはこの1月Cプログラムが最後のご出演となるそうです。
私自身としては、コンマス就任時から退任時までずっと見てきた方なので、感慨深いところがありますが、やむをえません。今後の篠崎さんの益々のご活躍をお祈りしたいと思います。
それはそれとして演奏ですが、今回ソヒエフは、違った背景の2曲を違ったアプローチに聴かせてくれました。
「プルチネッラ」はペルゴレージなどバロック時代の素材を利用してバロック風に構成した20世紀音楽。和音がおしゃれで素敵な曲ですが、ソヒエフは、室内楽風のこの曲をクリアに演奏させたと思います。N響管楽器陣のテクニックもあって明快でかっちりと聴こえてきます。こういう演奏は一つの行き方で悪くはないし、アンサンブルのお手本のような演奏になっているとは思うのですが、残念ながら面白くないのですね。やりすぎると音楽が壊れてしまうかもしれないけど、もう一押し味付けが欲しかったかな、というのが正直なところです。ソヒエフの真面目さが悪い方向に働いてしまったと言えばいいのでしょうか。
後半の「ブライチ」。こちらもはっきり申し上げれば「いまいち」でした。ソヒエフは、この曲のロマン派的なところに着目してその味を出したかったのではないかと思うのですが、上手くいっていなかったということなのでしょう。テンポはやや遅め。このテンポでやれば昔の大御所的指揮者の演奏を思い出してしまうのですが、大御所的重しが利かないので、どこか軽いのです。ソヒエフの目指すところはおそらく大御所的な方向ではなく、奏者に自発的に歌わせて、自律的なアンサンブルに仕上げることだったようにも見えたのですが、あまりテンポを刻んでいるように見える指揮ではなかったので、指揮者の目指すところと個々の奏者の感じたところにミスマッチがあった感じで、乱れも多かったように思います。
指揮:ペトル・ポペルカ
曲目: | ツェムリンスキー | シンフォニエッタ 作品23 | |
R・シュトラウス | ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 | ||
ホルン独奏:ラデク・バボラーク | |||
ドヴォルザーク | 交響詩「野鳩」作品110 | ||
ヤナーチェク | シンフォニエッタ |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:客演(4月からN響第1コンサートマスター就任が発表されている長原幸太さん、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:客演(新日本フィルの神農 広樹さん)、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:客演(千葉交響楽団の大森 啓史さん)、トランペット:菊本(バンダ:長谷川)、トロンボーン:新田、テューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、客演(フリー奏者の津野田 圭さん)
弦の構成:14型(前半2曲)/16型(後半2曲)
会場:NHKホール
感想
読売日本交響楽団の前のコンサートマスターで、篠崎史紀さんの後任としてN響第一コンサートマスターに就任することが発表されている長原幸太さんのお目見えコンサート。指揮者のポペルカもN響初お目見えなので、「初」が二つ重なったコンサートになりました。プログラムは、チェコ人指揮者らしく、チェコに由来のある曲を並べたもの。チェコ人指揮者はコシュラーだのノイマンだのピエロフラーベクだの数多くの指揮者がN響の指揮台に立ってきましたが、お得意はチェコの曲。ポペルカもチェコ人の血を意識したのでしょう。
演奏全体を通して思ったのは、チェコの土着性等では全然なくて、ポペルカの持つ明晰なイメージです。今の若い指揮者で評価されている人に共通するところなのですが、自分の持つ印象をしっかりとオーケストラメンバーに伝えられる言葉とバトンテクニックを持っている方のようにお見受けしました。
最初のツェムリンスキーのシンフォニエッタは、調性に関してはあいまいな感じはあるものの、無調な感じでは全くなく、むしろポップス的なポピュラリティも感じさせる曲。リズムがはっきりしていて、基本的にスピード感のある、いかにも1934年というナチスドイツが台頭しているけれども、まだ戦争の臭いが表れていない機械文明の時代を感じます。ポペルカはこの曲をリズムを立たせたスピード感あふれる演奏で、くっきりと見せてくれました。
2曲目のホルン協奏曲。バラポークの卓越した演奏技術にすっかりやられました。ホルンという演奏が難しい楽器をフォルテからほとんど聞こえないぐらいのピアニシモまで自在に操り、音が濁らないところはただただ感服するしかありません。バラポークの演奏を聴いていると、芸術性は、十分な技術があってこそ生まれるものだということを痛感させてくれます。兎に角クリアで確実。安心して聴けて全く不安がない。と言って奇の衒ったことをすることもない。だからN響とのバランスも良く、素晴らしい演奏になりました。
「野鳩」。こちらも明晰な演奏。ストーリーのあるお話につけた標題音楽ですが、標題を無理に目立たせることはなく、と言って、雰囲気がないというわけでもないいい感じのバランスで演奏され、よかったと思います。
最後のヤナーチェクのシンフォニエッタ。最初と最後のバンダのトランペットと小テューバによるファンファーレが印象的な曲ですが、今回バンダには、N響の首席奏者である長谷川さんと2番奏者の安藤さんも乗り、13本のトランペットとテューバによるファンファーレが格好いい。その後の展開もリズミカルで全体的に締まっていて、N響の個々のメンバーの高い技量が引き出された感じがします。いい演奏でした。
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