どくたーTのオペラベスト3 2000

第1位 11月5日  ウィーン国立歌劇場2000年日本公演
ドニゼッティ作曲「シャモニーのリンダ」
字幕付原語上演  会場 
NHKホール

第2位 8月4日  東京二期会オペラ劇場
ブリテン作曲「真夏の夜の夢」
オペラ3幕、字幕付き原語上演  会場 Bunkamuraオーチャードホール

第3位 11月27日 平成12年度(第55回)文化庁芸術祭主催公演/芸術祭国際共同公演
バルトーク作曲「青ひげ公の城」
オペラ1幕、字幕付原語上演  会場 新国立劇場中劇場

ベスト歌手
久保田真澄(バス)

特別賞 11月15日
高橋薫子ソプラノリサイタル
会場 王子ホール

選考理由

 2000年は、1年間で12本のオペラと17回のN響定期公演、そして1回のリサイタルを楽しむことが出来ました。その中でTにとってのオペラベスト3を選ぼうという試みです。まず、見た12本のリストをあげます。

2000年01月14日 ドニゼッティ「ルチア」(藤原歌劇団主催 Bunkamuraオーチャードホール)
2000年02月24日 ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」(新国立劇場/藤原歌劇団主催 新国立劇場オペラ劇場)
2000年03月15日 ヴェルディ「椿姫」(藤原歌劇団主催 東京文化会館大ホール)
2000年07月21日 ロッシーニ「オテロ」(東京オペラプロデュース主催 新国立劇場中劇場)
2000年08月04日 ブリテン「真夏の夜の夢」(二期会主催 
Bunkamuraオーチャードホール)
2000年09月07日 ロッシーニ「幸せな間違い」(新国立劇場主催 新国立劇場小ホール)
2000年09月26日 プッチーニ「トスカ」(新国立劇場主催 
新国立劇場オペラ劇場)
2000年10月10日 モーツァルト「魔笛」(新国立劇場主催 新国立劇場オペラ劇場)
2000年11月05日 ドニゼッティ「シャモニーのリンダ」(ウィーン国立歌劇場日本公演 NHKホール)
2000年11月16日 ロッシーニ「ランスへの旅」(日本ロッシーニ協会主催 北とぴあさくらホール)
2000年11月27日 バルトーク「青ひげ公の城」(新国立劇場主催 新国立劇場中劇場)
2000年12月25日 ウェーバー「アブ・ハッサン」/ロルツィング「オペラの稽古」(新国立劇場主催 新国立劇場小ホール)

 この中に聴くんじゃなかった、お金と時間の無駄だった、と思える公演は皆無でした。特に中々上演されないオペラをいくつも聴くことが出来たのは今年の収穫でした。これらのオペラは当然ながら最高の水準のものばかりではなかった訳ですが、それでも今後再会できるかどうかもわからないのですから、この機会を大事にしたいと思います。

 これらの中で、私が満足できたのは次の6公演です。即ち、「セヴィリア」、「真夏の夜の夢」、「魔笛」、「シャモニーのリンダ」、「ランスへの旅」、「青ひげ公の城」です。これらの中で相対的に見て一段落ちるのは「セヴィリア」と「ランスへの旅」だと思います。「セヴィリア」は、26日のオール日本人キャストの演奏の評価が高い様ですが、私の聴いた24日は、フィガロの出来が今一つで残念でした。「ランス」は、日本人初公演の意義と意欲は大いに買うのですが、ウィーン国立歌劇場の引越し公演における「ランス」を聴いた身としては、一段落ちることはどうしても否めません。というわけで残り4作から3作を選ぶのですが、これははっきり言って非常に難問です。「シャモニー」は図抜けて良かったので文句なしですが、残り3作はどれもそれなりに魅力がありました。

 「魔笛」は、非常によく練られた舞台で、歌手も総じてよく、「まとまり」という意味では、3演目中随一でした。若手の歌手が多く出演したわけですが、みなさんよく練習しており、ミスが少ないと云う点でもよかったです。演出もわかりやすく、奇を衒うわけではなく、そこも好感が持てました。しかし、なにか頭抜けたものがないのですね。そうなると、舞台全体の魅力としては、「真夏の夜の夢」と「青ひげ公の城」に比べて若干劣るような気がしてしまうのですね。というわけで4位ということにしました。

 3位の「青ひげ公の城」は演出と演技の評価です。歌を抜きにしたドラマとして見た場合、この舞台が今年一番でした。コーワン、チェジンスキー共に、さほど良い歌唱をしたとは思わないのですが、この二人の演技とフリードリッヒの演出は非常に素晴らしいものでした。飯森泰次郎の振る新星日本交響楽団も好演で、舞台全体を引き締めるのに大いに役立っておりました。

 2位の「真夏の夜の夢」も非常に質の高い舞台だったと思います。若杉弘の音楽の組み立てがまずよく、一つ間違うとばらばらになってしまいそうな音楽をうまくコントロールしていたと思います。歌手も総じて良く、特に森麻紀の歌唱は賞賛すべきものでした。最初日本語上演とアナウンスされたいたのを原語上演に切り替えて、それにも拘らず、高質の演奏を聴かせてくれたと云う点で2位に選びたいと思います。

 映えある1位は、ウィーン国立歌劇場の引越し公演での「シャモニーのリンダ」にしました。理由は唯一つ、グルベローヴァの歌唱です。グルベローヴァは、コンサートで聴いたことはあります。そのときの印象は、素晴らしい歌手だとは思いましたが、これほど凄いとは思いませんでした。オペラ歌手がオペラの舞台にたち、本気を出した時の凄さを思い知らされました。登場のアリア「私の心の光」は、脊髄を揺り動かすような歌でした。背中がゾクゾクしました。アリアを聴きながら震えが来たのは、10年ぶりほどの経験でした。このようなプリミティブなレベルで聴き手に感動を与えると云う事は、現実には非常に難しいことです。この一つの事実だけで2000年ナンバー1は動かせません。サッバティーニが今一つだったなどと云う事は、グルベローヴァの歌唱の前ではどうでもよいことです。

 以上がベスト3の選考理由なのですが、このほかにベスト歌手を選びたいと思います。それで選んだのが久保田真澄さんです。私は、2000年に彼が出演するオペラを5本見たのですが、どれでも好調な歌唱を聴かせてくれました。特に「幸せな間違い」におけるタラボットの歌唱と、「ランスへの旅」におけるドン・プロフォンドの歌唱は特筆すべきものがありました。

 2000年のオペラシーンにおけるT的ベストは以上のとおりです。この他に、言及しなければならないものに高橋薫子リサイタルがあります。このリサイタルは本当に素敵な時間でした。バロックからベルカント時代までの歌曲を歌ったのですが、どれもよくコントロールされて、しかもある程度強い声で、非常に堪能いたしました。この演奏会は特別賞に値するものだと思います。

 尚、本選考の賞品はありません。選ばれた方には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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