どくたーTのオペラベスト3 2006

第1位 4月20日  東京二期会オペラ劇場公演
モーツァルト作曲「皇帝ティトの慈悲」
字幕付原語上演  会場 新国立劇場・オペラ劇場

第2位 11月3日  東京二期会オペラ劇場公演
モーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」
字幕付原語上演 会場 日生劇場

第3位 9月18日  東京二期会オペラ劇場公演
モーツァルト作曲「フィガロの結婚」
字幕付原語上演  会場 オーチャードホール

ベスト歌手
宮本益光(バリトン)

優秀賞 
R・シュトラウス作曲「ダナエの愛」(新宿文化センター公演/東京二期会制作、1/22)
マスカーニ作曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」/レオンカヴァッロ作曲「道化師」
/「(新国立劇場公演、4/20)
プッチーニ作曲「トスカ」
(藤原歌劇団公演、5/7)
ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」(国立音楽大学/サントリーホール、5/10)
プレヴィン作曲「欲望という名の電車」東京室内歌劇場公演、8/23)
(優秀賞は上演順)

選考理由

 2005年は、31回オペラを見に出かけ、32本のオペラを鑑賞いたしました(演奏会形式を含む)。

 本年はモーツァルト生誕250年ということで、例年よりもモーツァルトのオペラの上演が多かったようで、そこが一つの特徴と申し上げてよいのでしょう。いわゆるモーツァルトの7大オペラ(「後宮からの逃走」、「イドメネオ」、「フィガロの結婚」、「ドン・ジョヴァンニ」、「コジ・ファン・トゥッテ」、「魔笛」、皇帝ティトの慈悲」)は全て上演されましたし、そのほかにも「劇場支配人」だの、「アポロンとヒュアキントス」などという作品も上演されました。私個人としても2週間のうちに「イドメネオ」の別プロダクションを聴くということなどが起きるとは、予想にもしていませんでした。

 モーツァルトを中心にして、本年の日本オペラ界は活況を示していた、と言いたいところですが、内実はお寒い限りです。確かに強い印象に残った上演はあります。しかし、全体としては低調と申し上げざるを得ない。まず、新国立劇場の低調が致命的です。本年の新国の新演出は全て失敗と申し上げても大きな間違いではないでしょう。お客の入りも一時期より確実に減っています。私個人としては、場所的にも、天井桟敷からの距離感にしても、舞台装置の豪華さにしても、好きな劇場ナンバーワンなのですが、折角お金をかけて豪華な上演をしても、それが、音楽的感動に結びつかないのは、どうにもやり切れません。

 新国立劇場が不調なのは、ノヴォラツスキーが芸術監督になって以来続いていることで、ある意味驚くに値しないのかもしれませんが、本年は、在野の団体も昨年と比較すると不調だった、と申し上げても許されるかもしれません。例年6作品挙げている優秀公演を5公演しか挙げられなかったことがその例ですし、挙げた5公演にしても昨年ならば優秀作品に選んでいないだろうな、と思うものもあります。

 その中で気を吐いていたのが東京二期会です。2月の「ボエーム」こそ失敗だったものの、「皇帝ティトの慈悲」、「蝶々夫人」の再演、「フィガロの結婚」の再演、「コジ・ファン・トゥッテ」とどれも高水準の上演で大変感心いたしました。本年はモーツァルト・イヤーであると同時に二期会イヤーだったな、というのが私の偽らざる気持ちです。

 さて、選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新宿文化センター主催公演「ダナエの愛」は、演奏会形式なれど日本初演です。その作品をリヒャルト・シュトラウスのスペシャリスト・若杉弘が魅せました。舞台裏ではいろいろとあったようですが、客席では、十分楽しめた演奏で、舞台が無くてもこの作品の魅力は伝えられていたのではないかと思います。

 新国立劇場の公演から選ぶとすれば、このヴェリズモオペラ二本立てか12月の「セヴィリアの理髪師」でしょう。どちらも再演。「セヴィリア」では、バルチェッローナのロジーナが抜群に魅力的ですが、音楽全体のまとまりという点では、今ひとつだったと申し上げざるを得ません。4月のこの二本立ては、プレミエ時のジャコミーニのような大看板がいなかったにもかかわらず、ずっとまとまった上演になりました。指揮ルイージの力、と申し上げてよいかも知れません。

 藤原の「トスカ」は、私がこれまで聴いた最高のトスカでした。「トスカ」らしい下品な味わいが素晴らしいと思いました。

 「ファルスタッフ」はひとえにブルゾンの魅力です。オーケストラがかなり厳しかったにもかかわらず、上質な演奏が聴けたのはブルゾンの力量と、森口賢二ををはじめとする日本人歌手陣の努力の賜物と申し上げましょう。

 東京室内歌劇場「欲望という名の電車」は、2003年の日本初演の再演でした。初演のとき聴いた松本美和子/勝部太のコンビも良かったですが、今回の釜洞祐子/宮本益光のコンビも、松本/勝部とは違った味わいながら、作品の持ち味を上手く表現されていました。

 ベスト3は、モーツァルト×二期会で決まりでしょう。

 まずは、9月の「フィガロの結婚」。2002年の再演です。宮本亜門がオペラを演出した第一作だったはずですが、オーソドックスな演出でなかなか良いものでした。今回のホーネックの演奏は、特別なけれんは見せないものの、細かいところに気を配った演奏で、細部までないがしろにしないという意思が明確だったと思います。黒田博など男声陣も良かった。

 11月のコジもまた素晴らしい公演でした。トータルの完成度、という意味では、私がここ10年以内ぐらいで聴いた「コジ・ファン・トゥッテ」の中では、まず最高と申し上げてよい。演出の意図と音楽の意図とが明確で、それが、お互いに相互作用して冗長さがなくなります。今回は完全全曲演奏ということで、25分の休憩を含んで3時間30分を越える演奏時間となったわけですが、その長時間を全く弛緩することなく、聴き手にも退屈を感じさせずに演奏したのは、大したものだと思います。

 そして、栄えあるベスト1は、「皇帝ティトの慈悲」で決まりです。コンヴィチュニーの意表をついた演出も印象的でしたが、その中で音楽的魅力を弛緩させることなしに演奏したスダーンの指揮ぶりもすばらしいものだったと思います。歌手陣も望月哲也、林美智子、幸田浩子などががんばっていました。

 ベスト歌手は、「コジ・ファン・トゥッテ」のグリエルモ、「欲望という名の電車」のスタンリーを歌って気を吐いた宮本益光が順当です。

 2006年のオペラ公演におけるT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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