どくたーTのオペラベスト3 2010

第1位 2月17日 東京二期会オペラ劇場公演
ヴェルディ作曲「オテロ」
字幕付原語上演  東京文化会館大ホール

第2位 6月13日  藤原歌劇団公演

ロッシーニ作曲「タンクレーディ」
字幕付原語上演 会場 東京文化会館大ホール

第3位 3月24日 新国立劇場公演
ワーグナー作曲「神々の黄昏」
字幕付原語上演 会場 新国立劇場オペラ劇場

ベスト歌手
福井 敬(テノール)

優秀賞 
ワーグナー作曲「ジークフリート」(新国立劇場公演、2/23)
ドビュッシー作曲「ペレアスとメリザンド」
(新日本フィルハーモニー交響楽団第461回定期演奏会、墨田トリフォニーホール、5/21)
スメタナ作曲「売られた花嫁」
(都響創立45周年記念特別公演、サントリーホール、7/19)
ザンドナイ作曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」(首都オペラ公演、神奈川県民ホール、9/4)
ドニゼッティ作曲「ピーア・デ・トロメイ」昭和音楽大学オペラ公演、10/10)
アルファーノ作曲「シラノ・ド・ベルジュラック」(東京オペラプロデュース公演、新国立劇場中劇場、12/12)
ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」(新国立劇場公演、12/25)
(優秀賞は上演順)

選考理由

 2010年は、38回オペラを見に出かけ、39本のオペラを鑑賞いたしました(演奏会形式を含む)。自分としては、更に見たい公演がいくつもあったのですが、時間的な都合や、チケットの売り切れなどで、見れなかった公演がいくつかあります。そこが一寸心残りです。

 本年もここ数年来と同様に、バラエティに富んだオペラ上演があった、という印象が強い1年です。私の鑑賞記録を分類すると、39本中11本は、舞台上演を見るのが初めての作品でした。それ以外でも、久しぶりに見た作品もいくつかあり、そういう点でも、バラエティに富んだオペラ公演を鑑賞した、と思うところです。公演主体もそうです。新国立劇場、二期会、藤原のメジャーなところだけではなく、市民オペラや大学オペラも色々見ましたし、ピアノ伴奏形式から、新国立劇場のワーグナー公演のような大規模なものまで、いろいろ見ることが出来ました。嬉しいことです。

 また、本年感じたのは、文化予算が切り詰められる中、現場で上演に向かって熱意を捧げている方がたくさんいらっしゃるな、ということです。新国立劇場も、裏方さんたちは大変なようです。それでも、一所懸命オペラを送り出そうとしているらしい。そういうオペラ上演に熱意を持っている方が沢山いることを踏まえて、今年のベスト上演を選んでみました。

 さて本年の全体感ですが、文句なしにノックアウトされた公演はほとんどなかったのですが、相当水準の高い上演があった、ということは申し上げてよいと思います。優秀公演としてベスト10を選びましたが、あと4-5作品は、ベスト10に選ばれてもおかしくないと思います。そこを列挙すると、まず新国立劇場のレパートリー公演、「カルメン」、「フィガロの結婚」、「アンドレア・シェニエ」があります。これらは、他とのバランスを踏まえて落しましたが、日本のオペラ制作の水準を示すものとして十分でした。南條年章オペラ研究室の「ギヨーム・テル」は、バレエシーンはカット、ピアノ伴奏ではありますが、このロッシーニの傑作を紹介した、という意味では意味のある演奏でした。日生劇場の「オルフェオとエウリデーチェ」。オーケストラの演奏がとてもよかったです。東京室内歌劇場「ラ・カリスト」。正直なところ、楽しめる域には至りませんでしたが、知的好奇心を刺激してくれました。

 さて、選択した優秀公演を簡単に総括します。

 2009年、2010年の2年間にわたって挙行されたリング四部作の上演、尻上がりによくなりました。「ジークフリート」、「神々の黄昏」、共に聴き応えのある名演と申し上げてよいと思います。ダン・エッティンガーの指揮がよく、歌手陣も頑張りました。演出も結構ですし、ワーグナー嫌いでも感心できる公演、と申し上げます。

 今年は、オーケストラの定期公演等で取り上げられた演奏会形式のオペラを随分聴きました。その中で、新日本フィルの「ペレアスとメリザンド」と都響の「売られた花嫁」が図抜けていたと思います。「ペレアス」は、アルミンクの絶妙な全体コントロールが素晴らしく、またメリザンド役の藤村実穂子の名唱が光りました。都響は、レオシュ・スワロフスキーの指揮と、スロヴァキア国立歌劇場の面々が織りなす、一寸草の薫りのする歌が魅力的で楽しめました。

 「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、演奏全体としては、ベスト10入り出来るかどうか、と言うところでしょう。しかし、地方の団体が、日本初演の作品を取り上げた心意気と、主役のフランチェスカを歌った小林厚子の魅力を買って、ベスト10に入れたいと思います。「ピーア・デ・トロメイ」は、庄司奈穂子と駿河大人という二人の若手歌手の清新な歌唱に一票を投じます。

 「シラノ・ド・ベルジュラック」は、何となく違和感を持ちながら聴いていながらも、最後は感動させられてしまったことを評価します。シラノ役の内山信吾の役作りにBRAVOを申し上げたいと思います。新国立劇場の「トリスタンとイゾルデ」。オーケストラの初日問題は完全に解決はしていませんでしたが、大野和士の音楽解釈と歌手陣の素晴らしさは、評価すべきでしょう。トリスタン、イゾルデ、ブランゲーネ、みんなよかったです。

 優秀作品の上を行くベスト3ですが、第3位は、新国立劇場「ニーベルングの指環第3夜、神々の黄昏」にします。この巨大なプロダクションは、再演されて、その魅力をもう一度見せてくれました。歌手、オーケストラ、共に素晴らしいものだったと思います。

 第2位は、藤原歌劇団の「タンクレーディ」です。読響の音色が、ドイツ的すぎるという批判もありましたが、私はあのシンフォニックなたたずまいが又よかったのではないかと思っています。主役のピッツォラートは万全ではなかったように思いますが、ゼッダの指揮の魅力と、高橋薫子、中井亮一の二人の歌が非常によく、私の大好きなロッシーニのオペラであることを含めて、第二位にする次第です。

 本年のベスト1は、東京二期会オペラ劇場の「オテロ」を選びます。オテロ役の福井敬、イアーゴ役の大島幾雄がどちらも軽めの歌唱ながら、どちらも魅力たっぷり。デズデモナ役の大山亜紀子も良く、白井晃の演出も良いと思います。更には、ロベルト・リッツィ=ブリニョーリ指揮する東京都交響楽団の音色も美しく、音楽作り、歌唱、演出の三部がそれぞれ高いところで結びついた名舞台でした。この「オテロ」の一位は断トツと申し上げてよいと思っています。

 ベスト歌手はこのオテロを歌いあげた福井敬で決まりでしょう。私は、「影のない女」で「鷹の声」、N響「アイーダ」で「巫女」、「シラノ・ド・ベルジュラック」で「ロクサーヌ」を歌われた大隅智佳子に凄く惹かれるのですが、福井のオテロの名唱は高く評価されるべきでしょう。

 2010年のオペラ公演におけるT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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