どくたーTのオペラベスト3 2015

第1位  6月27日 新国立劇場公演
松村禎三作曲「沈黙」
日本語字幕付日本語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

第2位 2月22日 東京二期会オペラ劇場公演

ヴェルディ作曲「リゴレット」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 東京文化会館大ホール

第3位  10月10日 新国立劇場公演
ワーグナー作曲「ラインの黄金」
日本語字幕付ドイツ語上演 会場 新国立劇場オペラハウス

ベスト歌手
小餅谷 哲男(テノール)

優秀賞 
ヨハン・シュトラウス二世作曲「こうもり」(新国立劇場公演 新国立劇場オペラパレス、2/1)
石井歓作曲「袈裟と盛遠」(日本オペラ協会公演、新国立劇場中劇場、3/28
ヴェルディ作曲「椿姫」新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、5/10)

ヘンデル作曲「エジプトのジューリオ・チェーザレ」(二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演、新国立劇場中劇場、5/23)
R・シュトラウス作曲「ばらの騎士」新国立劇場公演、新国立劇場オペラハウス、5/24)
ロッシーニ作曲「ランスへの旅」藤原歌劇団/日生劇場公演、
日生劇場、7/4)
ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、12/12)
(優秀賞は上演順)

特別賞
R・シュトラウス作曲「サロメ」 (NHK交響楽団第1823回定期演奏会、NHKホール、12/4)

選考理由

  2015年に私が観劇したオペラ上演は37回38本、オペラ公演は特定の日程に集中する傾向があるようで、聴きたい公演がない週も結構あるのに、重なるときは重なります。その傾向が2015年は一寸多かった印象があります。その他、諸事情で行かれなかった公演も多く、2014年より7本減の成果でした。例年の如く、行った公演は、市民オペラ、大学オペラ、東京二期会、藤原歌劇団、新国立劇場の本公演までさまざまな上演を見ております。

 全体的な感想を申し上げれば、2014年の全体的に高水準だった1年と比較すると玉石混交の1年と申し上げてよいのではないでしょうか。非常に素晴らしい上演もあった一方で、それほどでもなかったものもあったと思います。また、前半に良い公演が多く、後半はそうでもなかった、ということは言えると思います。なお、全体的には色々な意味でレベルが上がり、素敵な公演が増えているというのが本当のところです。

 まとまりの点でベスト10からは外しましたが、1月の藤原歌劇団公演「ファルスタッフ」、新国立劇場「さまよえるオランダ人」なども高水準の演奏でした。

 今年のもう一つの特徴は、新国立劇場の好調の維持です。年間10公演のうち、ベスト10に絶対選べないよな、と思ったのは「運命の力」だけで、それ以外は、ベスト10に選ばれてしかるべきパフォーマンスでした。ベスト10のうち6演目を新国立劇場公演にしたのは、それだけ新国立劇場の演奏が素晴らしいと思えたからです。新国立劇場は叩かれることも多かったし、かつては全然なっていない公演も多かったのですが、安定した高水準が保てるようになってきています。昨年も申しましたが、ナショナルフラッグシップの劇場が、素晴らしい公演を立て続けに行うことは、日本のオペラ文化の水準の向上を示すものですから、大いに喜ばなければいけません。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新国立劇場「こうもり」。とても良くまとまった舞台。この舞台用の良く練られた台本があってのことと思います。緻密な構成で笑える舞台です。
 石井歓「袈裟と盛遠」。日本オペラ史上の成果の一つを沢崎恵美、中鉢聡、泉良平らが歌唱しました。このイタリア・オペラ的な日本オペラをイタリアオペラ的に見せたスタッフも評価したい。
 新国立劇場「椿姫」。今年新国立劇場ではプレミエ公演が三つあり、その一つ。何年か前までは新国立劇場のプレミエはダメと相場が決まっていたものですが、この演奏はまとまっていました。
 二期会若手歌手たちによる「ジューリオ・チェーザレ」。菅尾友の演出が結構退屈なバロックオペラを面白く仕上げていました。若手歌手たちも総じて好演。
 新国立劇場「ばらの騎士」。最高の「ばら」ではなかったとしても十分ホーフマンスタールの文学性とシュトラウスの音楽を味わえる舞台。素敵でした。
 藤原歌劇団の「ランス」二日目。舞台としてのまとまりはベテラン中心の初日よりこちらが上でした。
 新国立劇場「ファルスタッフ」。主役のファルスタッフだけで比較すれば1月の藤原の牧野正人も良かったのですが、アンサンブルの美しさを比較すれば断然新国立劇場になります。増田弥生のページ・メグがアンサンブルのバインダー役を上手く果たしていました。

 特別賞のN響は演奏会形式ですから特別賞ですが、音楽の出来という観点から申し上げれば、今年の最高のものです。デュトワ/N響の実力をいやというほど知らされました。

 さて、どくたーTの選ぶ今年のベスト3ですが、第3位は新国立劇場「ラインの黄金」にします。フィンランド国立歌劇場からレンタルされたゲッツ・フリードリヒの舞台は、具象性と抽象性が良く溶け合った美しい舞台。新国立劇場の「リング」と言えば、キース・ウォーナーのポップな「東京リング」だったわけですが、この落ち着いた感じは悪くないです。芸術監督・飯守泰次郎の曲作りも納得いくものでしたし、歌手陣も立派。ベスト3の一つに選ぶに躊躇するところはありません。

 第二位は東京二期会の「リゴレット」。本年の国内団体のパフォーマンスではこれが最高だったと思います。二期会の本年の公演、「魔笛」も「ダナエの愛」もそれぞれ見るべき点はありましたが、全体のまとまりと水準から行けば、これが最高です。若手中心の歌手たちも良かったし、何を言ってもバッティストーニの音楽作りが良い。2012年のナブッコの時よりも成長が感じられたのも嬉しいところです。

 第一位は新国立劇場「沈黙」です。今までの中劇場からオペラハウスへもってきての公演。これが音の深みに大きく影響を与えました。従来も素晴らしい音楽だと思っていましたが、オペラ劇場に持ってきて、ますます良さが光った感じです。下野竜也の音楽作りもよく、小餅谷哲男のロドリゴ、星野淳のキチジロー、高橋薫子のオハル、与田朝子のおまつと歌手たちも素晴らしく、最高の演奏になりました。本年第一に推すに何の躊躇もありません。

 ベスト歌手ですが、ひとりだけ選ぶとすれば「沈黙」で最高の歌唱・演技を見せた小餅谷哲男でしょう。彼のロドリーゴは三度目ですが、毎回どんどん研ぎ澄まされてきて、凄いとしか申し上げられないパフォーマンス。今年は小餅谷の年で宜しいと思います。

 2015年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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