どくたーTのオペラベスト3 2020

第1位  10月8日 新国立劇場公演
ブリテン作曲「夏の夜の夢」
日本語字幕付英語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

第2位 11月3日 ジャパン・アーツ/バッハ・コレギウム・ジャパン公演

ヘンデル作曲「リナルド」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 
東京オペラシティ・コンサートホール

第3位  3月20日 ミラマーレ・オペラ公演
池辺晋一郎作曲「てかがみ」

 会場 六行会ホール

ベスト歌手
藤木 大地(カウンター・テノール)

優秀賞 
寺嶋民哉作曲「紅天女」
(日本オペラ協会公演、オーチャードホール、1/11)
ヴェルディ作曲「ドン・カルロ」(KONO国際交流公演、調布だずくり・くすのきホール、8/18)
メノッティ作曲「アマールと夜の訪問者」東京文化会館オペラボックス公演、東京文化会館小ホール、8/30)

平井秀明作曲「かぐや姫」(アリオーソLLC公演、紙芝居形式・ハイライトコンサート、セシオン杉並ホール、10/25)
藤倉大作曲「アルマゲドンの夢」新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、
11/18)
レハール作曲「メリー・ウィドゥ」東京二期会オペラ劇場公演、日生劇場、11/26)
ベッリーニ作曲「ノルマ」(町田イタリア歌劇団公演、町田市民フォーラム、3Fホール、12/19)

(優秀賞は上演順)

特別賞
該当なし

選考理由

  2020年はコロナ禍のお陰で、オペラ受難の年になりました。例年50本前後のオペラを見ていて、本年も何もなければ同じ数ぐらい見たと思うのですが、最終的に観ることのできたオペラは、演奏会形式公演やハイライト公演まで含めて24本。昨年の半分にも行きませんでした。何しろ上演されていないですからね。行きたくても行けない。特に市民オペラは全滅でしたし、大学オペラも昭和音大を別にすれば中止になったり、関係者のみの公演に変更になりました。上演されたものについても、フェイスシールドをしたり、出演者同士が密にならないようにばらけさせたり、かなり色々な対応を取っての上演になり、本来期待されていた味わいが相当減殺されたと思います。オペラ好きにとっては、総じて「残念な一年」だった、と申し上げてよいと思います。

 しかし、コロナ禍が始まってから何とか行われた公演は皆、「オペラの火は消さない」という気持ちが入っていました。席数制限のため、お客さんを入れることができず経済的には大変苦しいわけですが、それでも上演されたものは、技術的にはイマイチであったとしても、オペラ愛がしっかり入っていて、歌う喜びを感じさせてくれる公演が多かっです。日本のオペラ界の底力を感じさせてくれる、スタッフ・キャストの意気込みを感じさせてくれる公演を何度も拝見できたことを喜びたいと思います。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。なお、聴いている回数が少ないので、選択した公演は例年の水準には達していないとは思います。

 日本オペラ協会「紅天女」。漫画を題材にした分かりやすい作品。ある意味ミュージカル的と申し上げてもよいかもしれません。外題役の小林沙羅、一真役の山本康寛が共に素晴らしかったのが印象的です。
 KONO国際交流の「ドン・カルロ」。まだオペラ公演の在り方が手探りだった8月、席数制限の上、入場者は招待者のみという特殊な公演でしたが、中身はほんとうに普通の「ドン・カルロ」。低音系歌手が総じて素晴らしい演奏をしてくれたのも記憶に残るところです。
 東京文化会館オペラBOXの「アマールと夜の訪問者」。本年のベスト3に入れてもおかしくない名演奏。特に母親役の山下牧子がまさに入魂の歌唱というべき歌で素晴らしかったです。
 「かぐや姫」。紙芝居形式と称してホリゾントに紙芝居のような絵を投影しながら、歌手は演奏会のように歌うスタイル。高橋薫子、立花敏弘、三浦克次、村上敏明といったベテラン勢が、見事にまとまった歌を披露し、聴きごたえがありました。
 「アルマゲドンの夢」。本年のコロナ禍を予想して作曲したわけではないと思いますが、正に現代の世相に恐ろしいほどマッチした新作。冒頭のアカペラの合唱からフィナーレまで圧倒的な迫力に押しまくられた印象でした。
 東京二期会「メリー・ウィドゥ」。新演出ですが、東京二期会の伝統を感じさせる舞台と音楽で素晴らしかったです。腰越満美のハンナ、池田直樹のツェータ、宮本益光のダニロ、盛田麻央のヴァランシェンヌ。皆素晴らしい。
 町田イタリア歌劇団「ノルマ」。ほんとうに小さい会場でピアノ伴奏の舞台ですが、入魂の歌唱が聴けました。刈田享子のノルマ、高橋未来子のアダルジーザ、及川尚志のポリオーネ。皆立派でした。

 演奏会形式で素晴らしい演奏を紹介する特別賞は、本年は該当なしとします。コロナ禍の影響で半分演奏会形式のようなオペラが多かったので、ここで選ぶまでもないかな、ということです。

 さて、どくたーTの選ぶ2020年のベスト3ですが、第三位はミラマーレ・オペラの「てかがみ」です。コロナ禍による緊急事態宣言が発出される直前の舞台。このころは使用禁止になっている会場も多く、沢山の舞台が中止や延期になっていました。そんな中で実施した公演は内容の緊張感と現実の緊張感とが掛け合わされたのか、とても素晴らしい演奏に仕上がりました。澤ア一了、清水良一、鳥海仁子と皆立派で、脇役陣もしっかり自分の役目をはたして見事でした。

 第二位はバッハ・コレギウム・ジャパンの「リナルド」です。カウンターテノールが沢山出演するため、なかなか演奏される機会のないバロックオペラですが、今回は三人のカウンター・テノールを揃え、見事な音色になったこと、素晴らしかったです。また、音楽的一体感も見事でした。

 第一位は新国立劇場2020-21シーズンの冒頭を飾ったブリテン「夏の夜の夢」にします。海外からの来日が不可能な中、日本人カバーキャストによる演奏になりましたが、日本人歌手の音楽的レベルの高さを示すようなきっちりした演奏で、ほんとうに素晴らしいと思います。オベロン役のカウンター・テノール、藤木大地が力強さと妖艶さを兼ね備えた歌唱が抜群で、恋人たちを演じた4人(大隅智佳子、但馬由香、村上公太、近藤圭)がまた素晴らしい。それ以外の歌手たちもしっかり自分の役目をはたして素晴らしい演奏に仕上げていましたし、飯森範親の指揮やオーケストラの演奏も見事。本年のベスト・オペラに選ぶに全く躊躇がありません。

 本年のベスト歌手ですが、「夏の夜の夢」、「リナルド」の1,2位の作品で主役を歌った藤木大地を選びます。実は、「アッティラ」のフォレスト、「てかがみ」のマクベイン、「カルメン」のホセ、それに何度かのコンサートで素晴らしい歌唱を披露した澤ア一了にしようかなとも思ったのですが、やはり自分にとって本年1,2位の作品で主役を歌った方を抜くわけにはいかない、という判断です。

 2020年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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