どくたーTのオペラベスト3 2021

第1位  11月13日 NISSAY OPERA 2021公演
ベッリーニ作曲「カプレーティとモンテッキ」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 日生劇場

第2位 9月10日 藤原歌劇団公演

ベッリーニ作曲「清教徒」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 
新国立劇場オペラパレス

第3位  10月1日 新国立劇場公演
ロッシーニ作曲「チェネレントラ」

 日本語字幕付イタリア語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

ベスト歌手
澤ア 一了(テノール)

優秀賞 
プッチーニ作曲「トスカ」
(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、1/28)
ワーグナー作曲「ワルキューレ」(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、3/23)
池辺晋一郎「魅惑の美女はデスゴッデス」/プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」日本オペラ協会/藤原歌劇団公演、テアトロ・ジーリオ・ショウワ、4/24)

プッチーニ作曲「蝶々夫人」(藤原歌劇団公演、日生劇場、6/26)
ベルグ作曲「ルル」東京二期会公演、新宿文化センター大ホール、
8/28)
ヴェルディ作曲「椿姫」座間市市制50周年公演、ハーモニーホール座間、9/5)
プッチーニ作曲「蝶々夫人」(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、12/10)

(優秀賞は上演順)

特別賞
サン・サーンス作曲「サムソンとデリラ」
(東京二期会オペラコンチェルタンテシリーズ公演、オーチャードホール、1/6)

選考理由

 2021年はコロナ禍2年目に入り、その中でどのような公演を行っていくか、ということを各団体とも頭を悩ませながら、公演をブラッシュアップさせていった1年だったと思います。それでもまだ公演中止が何度もありました。上演された総数はまだ集計が終わっていませんが500公演前後でしょう。例年の三割減と言ったところでしょうか。そんな中で私は出来る限りコロナ禍前と同様にオペラに出かけ、最終的に観ることのできたオペラは、演奏会形式公演やハイライト公演まで含めて45本。例年並みに戻すことができました。それでも年初はフェイスシールドを着けた公演が残っていましたし、ソーシャルディスタンスに配慮した演出も常識になりました。観客も「Bravo」などの声をかけることは許されず、なかなか、本来の熱気を感じるまでには行かなかったようです。

 条件が厳しいほどみんなが本気になるのか、いい演奏が多かったと思います。ベスト10には選定しませんでしたが、相模原シティオペラの「サンドリヨン」(7/31)や藤原歌劇団の「ヘンゼルとグレーテル」(11/6)も素敵でしたし。新国立劇場では招聘していた外国人歌手が来日できず、日本人のカバーキャストが頑張って、本来のキャストよりも良い公演になったのではないかと思えるようなものもあって、聴き応えのある一年でした。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新国立劇場「トスカ」。題名役のキアーラ・イゾットンが渾身のトスカを演じました。女優魂を感じた演奏でした。スカルピアを悪役に見せるのはトスカの歌あってのことなのだな、ということを知らしめて下さいました。脇役陣も優秀。素晴らしい公演でした。
 新国立劇場「ワルキューレ」。外人歌手の来れない中、日本人歌手の底力が光った公演でした。小林厚子のジークリンデ、池田香織のブリュンヒルデ、藤村実穂子のフリッカと抜群の歌唱。村上敏明/秋谷直之のジークムントも立派でした。
 日本オペラ協会/藤原歌劇団のダブルビル。両日聴きましたが、こちらは2日目の方。「ジャンニ・スキッキ」のアンサンブルは初日の方が良かったですけど、あとは全部2日目の方が良かったと思います。死神役の相楽和子がとっても良かったのが印象的です。
 藤原歌劇団「蝶々夫人」。これもダブルキャストの両方を聴いたのですが、これは蝶々夫人を伊藤晴が歌った方。鈴木恵里奈の音楽づくりが自然で、題名役の伊藤晴がとても素晴らしい蝶々夫人を歌いました。藤田卓也のピンカートン、井出壮志郎のシャープレス、丹呉由利子のスズキ、ゴローの井出司とチームワークも抜群で全体として高レベルの演奏に纏まりました。
 東京二期会「ルル」。演奏が歌手・オーケストラ共に素晴らしく、3幕版でやってくれていたら、ベスト3に入れていたと思います。2幕版で上演したことが最大の失策だと思います。
 座間市「椿姫」。タイトル役がちょっと弱かった感じはありますし、全体のまとめ方も私の好みとは少しずれがあるのですが、完全に批判校訂版の楽譜通りに演奏したという珍しい「椿姫」なので選定です。繰り返しを全部やり、慣用のアクートなどは一切やらなかったのを聴いたのは初めての経験です。
 新国立劇場「蝶々夫人」。題名役の中村恵理が本当に素晴らしい蝶々夫人を聴かせてくれました。

 演奏会形式で素晴らしい演奏を紹介する特別賞は、演奏会形式を1本しか聴いていなかったので、本年は該当なしとしようかと思ったのですが、唯一聴いた二期会の「サムソンとデリラ」。これは指揮者が音楽を振り回しすぎだとは思いましたが、全体の水準は優秀賞レベルでしたのでこれを選びます。

 さて、どくたーTの選ぶ2021年のベスト3ですが、第三位は新国立劇場の「チェネレントラ」です。私が聴いたのは初日で、まだぎくしゃくした感じが残っていたのですが、それでも脇園彩のアンジェリーナは、かつて聴いたバルツァレベルの名唱。最初から最後まで狂いの見せない高レベルの歌唱は、歌を聴く醍醐味を味合わせてくれました。王子のルネ・バルベラ、ダンディーニの上江隼人も素晴らしく、更に城谷正博の手堅い指揮とも相俟って高水準の上演となりました。二日目以降はもっとこなれた舞台になって、バルベラは毎回Bisをやったようですから、もっと良かったのでしょう。

 第二位は藤原歌劇団の「清教徒」です。両キャストとも聴きましたが、これは初日のAキャスト。なんと言っても澤ア一了のアルトゥーロが「歴史的」と申し上げてよいほどの名唱。登場のカヴァティーナが見事に軽く高音を響かせ、第三幕は軽いけれども芯のある声で、しっかりと最初の大アリアと二重唱でエルヴィーラへの愛を伝えたと思います。彼の高音を聴けただけでもこの公演に来た甲斐がありました。もちろん佐藤美枝子のエルヴィーラも素敵で男声低音陣も魅力的と申し分ないもの。滅多にやられない作品ですが、本当に最高だったと思います。

 第一位は日生劇場の「カプレーティとモンテッキ」にします。山下裕賀のロメオが伸び伸びとした歌唱で素晴らしく、佐藤美枝子のジュリエッタも円熟の歌唱を披露しました。工藤和真以下の脇役も皆よく、立派な舞台でした。1位と2位との差は仕上がりの差です。今年はベッリーニ・イヤーと勘違いするほどどちらも素晴らしかったのですが、音楽全体のまとまりが「カプレーティとモンテッキ」の方が僅かに上。鈴木恵里奈(「カプレーティとモンテッキ」指揮)のコントロールが柴田真郁(「清教徒」指揮)のコントロールを僅かに上回っていたということなのでしょう。要するにどちらも高レベルの名舞台だったということです。

 本年のベスト歌手ですが、もうこれは歴史的名唱を聴かせてくれた澤ア一了以外は考えられません。澤アは昨年、本年と何度となく聴かせていただきましたが、いつも安定していて、そこが素晴らしいです。安定した実力の上でああ云ったホームランを飛ばすところ、今年の歌手に相応しいと思います。

 2021年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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