どくたーTのオペラベスト3 2023

第1位  5月27日 NISSAY OPERA 2023公演
ケルビーニ作曲「メデア」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 日生劇場

第2位 11月21日 新国立劇場公演

ヴェルディ作曲「シモン・ボッカネグラ」
日本語/英語字幕付イタリア語上演 会場 
新国立劇場オペラパレス

第3位  1月20日 ベルカントオペラフェスティバル公演
ロッシーニ作曲「オテッロ」

 日本語字幕付イタリア語上演 会場 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

ベスト歌手
岡田 昌子(ソプラノ)

優秀賞 
三木 稔作曲「源氏物語」
(日本オペラ協会公演、オーチャードホール、2/18)
ドニゼッティ作曲「劇場のわがままな歌手たち」(藤原歌劇団公演、テアトロ・ジーリオ・ショウワ、4/22)
ヴェルディ作曲「二人のフォスカリ」藤原歌劇団公演、新国立劇場オペラパレス、9/10)

R・シュトラウス作曲「ナクソス島のアリアドネ」(オペラバフ公演、調布市文化会館たづくりくすのきホール、9/17)
プッチーニ作曲「修道女アンジェリカ」/ラヴェル作曲「子どもと魔法」(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、10/1)
ヘンツェ作曲「午後の曳航」東京二期会オペラ劇場公演、日生劇場、11/23)
ラモー作曲「レ・ボレアード」(レ・ボレアード公演、北とぴあさくらホール、12/10)
(優秀賞は上演順)

特別賞
ヴェルディ作曲「オテッロ」
(東京フィルハーモニー交響楽団オペラ・コンチェルタンテシリーズ公演、東京オペラシティコンサートホール、7/27)

選考理由

 2023年は新型コロナ感染症が第5類になったことにより、舞台公演はほぼ本来に戻った年と申し上げてよいのでしょう。新国立劇場のレパートリー公演における合唱の並びなども元に戻りました。オペラ公演も延期公演の実施などもあり、かなり活気が戻ったと申し上げてよいのでしょう。

 そんな中で、私は今年も積極的にオペラ公演に通いました。最終的に拝見した数は、59回62本になると思います。今年も年間鑑賞本数の更新をしました。もちろんこれはどうかと思う公演もなかったとは申しませんが、コロナで歌えなかった、舞台ができなかった残念さを皆まだ覚えているのか、そのエネルギーが込められたいい公演が多かったように思います。最終的にベスト10は上記のようにしたのですが、このほかにも素晴らしい公演がいっぱいありました。特に特別賞対象の演奏会形式公演は4本拝見したのですが、どれもベスト10レベルの名演だったと思います。

 先にその4本に関して申しあげます。拝見したのは、東京交響楽団の「エレクトラ」、東京フィルハーモニー交響楽団オペラコンチェルタンテの「オテッロ」(ヴェルディ)、エルデ・オペラ管弦楽団「トスカ」、藤沢市民オペラ「オテッロ」(ロッシーニ)ですが、ここから1本に絞るのは本当に大変でした。

 東響「エレクオラ」。ジョナサン・ノットの素晴らしいオーケストラコントロールと、エレクトラ役のクリスティーン・ガーキーの声が素晴らしい。特にガーキーはあの大オーケストラの咆哮に負けない声で1時間半、凄かったです。東フィルの「オテッロ」も素晴らしかった。チョン・ミョンフンの素晴らしい指揮のもと、クンデ以下の歌手が皆素晴らしい。特に第3幕の緊張感は最高でした。次いでエルデ・オペラ管弦楽団の「トスカ」。アマチュアオーケストラながら見事な演奏。またタイトル役の小林厚子とスカルピアの斉木健詞がとてもよく、名演だったと思います。藤沢の「オテッロ」も魅力的。音楽監督の園田隆一郎の意識が深く浸透しているようで、アマチュアとしてはハイレベルでした。どれも夫々に凄いところがあって、なかなか1本に絞れません。最終的に東フィルの「オテッロ」にしたのは全体的なバランスが良かったことと、そのバランスがハイレベルでまとまっていたことによるものです。

 舞台上演でも選んだ公演に引けを取らない演奏がいくつもありました。印象にあるのは、1/31、新国立劇場「タンホイザー」、2/15、新国立劇場「ファルスタッフ」、2/23、東京二期会「トゥーランドット」、3/18、立川市民オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」、3/17、新国立劇場「ホフマン物語」、4/8東京二期会「平和の日」、5/25、新国立劇場「リゴレット」、10/8、東京藝術大学「コジ・ファン・トゥッテ」です。最終的にはベスト10には入れませんでしたが、これらの演奏も十分見事でした。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 日本オペラ協会「源氏物語」。日本語台本版の初演でしたが、三木稔の意図を反映した王朝絵巻風になっていたと思います。岡昭宏、佐藤美枝子、丹呉由利子と皆素晴らしい歌でした。

 藤原歌劇団「劇場のわがままな歌手たち」。東京オペラプロデュースの得意とする作品で、「ヴィヴァ・ラ・マンマ」というタイトルで知られていました。藤原歌劇団は批判校訂版を使用した舞台にしてきました。はっきり申し上げて内容のない作品ですが、その分バカバカしさは天下一品です。マンマ・アガタを演じた押川浩士が本当に面白く抱腹絶倒でした。

 藤原歌劇団「二人のフォスカリ」。日本で上演されたのは22年ぶりで滅多に取り上げられる作品ではないですが、主役の押川浩士以下の歌手とチームワークが素晴らしく、音楽的にも劇的にも楽しむことができました。

 オペラバフ「ナクソス島のアリアドネ」。10年ぐらい前まで活動していた都民オペラソサエティの後継団体による演奏。中橋健太郎左衛門がしっかりとオーケストラをコントロールし、歌手たちもいいチームワークで頑張ったと思います。聴いた直後に、「一マイナー団体の上演ながら感動は一流どころに負けないものがありました。この公演に携わった全ての方々に、「よくやったね、素晴らしかった」と申し上げます」と書いたのですが、その気持ちは今でも変わりません。

 新国立劇場「修道女アンジェリカ」と「子どもの魔法」のダブルビル。アンジェリカを歌ったイゾットンが抜群の存在感で、齊藤純子の公爵夫人も魅力的でした。「子どもの魔法」は沼尻竜典の指揮がますます冴え、クロエ・ブリオの子どもも良かったのですが、色々な役を掛け持ちした日本人歌手もいい感じにまとまったと思います。

 東京二期会「午後の曳航」。難解な音楽ではありますが、三島の世界観を再現した素晴らしい演出と演奏でした。特に主役の登を歌った山本耕平が素晴らしい歌唱を披露しました。

 レ・ボレアード「レ・ボレアード」。フランスバロックオペラを初めて聴きましたが、踊りと音楽が融合して見ていていい気持にさせてくださいました。古楽器演奏、合唱を含む歌、踊りのどれもが素敵で楽しみました。

 さて、以上の演奏にも増して素晴らしかったどくたーTの選ぶ2023年のベスト3ですが、第三位はベルカントオペラフェスティバルのロッシーニ「オテッロ」です。ロッシーニの「オテッロ」は滅多に上演されることのない作品ですが、今年は珍しく2回され、両方拝見しどちらも楽しめたのですが、内容的に1枚も2枚も上だったのは1月に上演されたベルカントオペラフェスティバルの方。タイトル役のオズボーンがとても立派なオテッロを演じ、ボニッジャのデズデーモナも素晴らしく、ロッシーニのオペラセリアの魅力を伝えるのに十分な舞台でした。

 第二位は新国立劇場の新演出「シモン・ボッカネグラ」にします。男声の重唱が素晴らしく、特にタイトル役シモンを歌ったフロンターリが見事でしたが、フィエスコ役のザネッラートもとてもいい歌。大野和士が今「シモン・ボッカネグラ」をやるならこの方、というべき歌手を集めて自らの指揮で歌わせたため、これだけ素晴らしい公演になったものと思います。

 そして今年の第一位は日本初演となる日生劇場、ケルビーニの「メデア」にします。岡田昌子の外題役が圧倒的に魅力的。ドラマティックな歌唱を終始要求される難役ですが、岡田は安定した歌唱がずっと続き最高の魅力。伊藤貴之、中島郁子の両低音がとてもよかったの印象に残っています。その他の方々もいいチームワークで良かったのですが、一番の立役者は園田隆一郎の音楽作りだったのかもしれません。日本初演の珍しい作品を立体的でいい感じでまとめたところに園田のベルカント・オペラとの相性の良さを感じました。

 本年のベスト歌手ですが、岡田昌子でいいでしょう。日本初演の演目のタイトルロールを歌い切り、年間一位に導いたところにその価値はあると思います。

 2023年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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