どくたーTのオペラベスト3 2024
第1位
10月12日 新国立劇場公演
ベッリーニ作曲「夢遊病の女」
日本語/英語字幕付イタリア語上演 会場 新国立劇場オペラハウス
第2位 11月10日 NISSAY OPERA 2024公演
ドニゼッティ作曲「連隊の娘」
日本語字幕付フランス語上演 会場 日生劇場
第3位
11月28日 新国立劇場公演
ロッシーニ作曲「ウィリアム・テル」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 新国立劇場オペラハウス
ベスト歌手
迫田 美帆(ソプラノ)
優秀賞
グノー作曲「ファウスト」(藤原歌劇団公演、東京文化会館大ホール、1/28)
ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」(立川市民オペラ公演、立川RISURUホール大ホール、3/24)
ロッシーニ作曲「セビリアの理髪師」(Bocca del Monte ×町田イタリア歌劇団公演、町田市民フォーラム、6/15)
ヴェルディ作曲「シシリアの晩鐘」(アーリドラーテ歌劇団公演、新国立劇場中劇場、6/22)
ヘンデル作曲「リナルド」(第53回サントリー音楽賞受賞記念コンサート新国立劇場公演、サントリーホール、8/17)
ヨハン・シュトラウス2世作曲「こうもり」(大田区文化振興協会公演、太田区民ホールアプリコ大ホール、8/31)
ドニゼッティ作曲「ピーア・デ・トロメイ」(藤原歌劇団公演、日生劇場、11/23)
(優秀賞は上演順)
特別賞
ヴェルディ作曲「マクベス」(東京フィルハーモニー交響楽団オペラ・コンチェルタンテシリーズ公演、東京オペラシティコンサートホール、9/15)
牧野 正人(バリトン)
選考理由
2024年は個人的には昨年よりもいろいろと多忙になったこともあって、昨年よりもオペラの鑑賞総数は減りました。昨年は59回62本だったのですが、今年はスケジュールが合わなかったこと、チケットが取れなかったこと等もあり、最終的には55回58本にとどまりました。その中でも初耳のオペラをいろいろ鑑賞しました。具体的には、日本オペラ協会の新作初演「ニングル」、「アンナ・ボレーナ」(ハイライト)、「ディダーミア」、「シシリアの晩鐘」、「霊媒」、「連隊の娘」、「エルミオーネ」です。これで308作品の舞台を拝見したことになりますが、これまで見ることのできなかった作品を拝見できることは、オペラファンとしてとても嬉しいことです。今後も見ることのできなかった作品を少しずつ見れるようにしていきたいと思うところです。
今年はベストテンを最終的には上記のようにしたのですが、これ以外もベスト10に入ってもおかしくない、と思える公演がいくつもありました。順番に挙げていくと、1月「ドン・カルロ」@大和、「エウゲニ・オネーギン」@新国立劇場、2月、「ドン・パスクワーレ」@新国立劇場、「アンナ・ボレーナ」@内幸町ホール、4月、「チェネレントラ」@新百合ヶ丘、5月、「椿姫」@新国立劇場、7月、「ドン・パスクワーレ」@座間、9月、二期会「コジ・ファン・トゥッテ」@新国、9月、「こうもり」@五反田、「トスカ」@立川です。実はベスト10+ベスト10に選べなかった20本は割とすんなり選べたのですが、そこから10本に絞るのが本当に大変でした。正直なところ甲乙がつけがたいのですが、自分が好きな作品や演出は優先度を上げ、あまり好きではない作品や演出は優先度を下げて、最終的に選出した10本が上記です。
選択した優秀公演を簡単に総括します。
藤原歌劇団「ファウスト」。ベスト3に入ってもおかしくない素晴らしい公演。阿部加奈子の指揮、澤崎一了、伊藤貴之、迫田美帆、井出壮志朗、但馬由香、合唱とみな素晴らしく、グランドオペラを見る魅力を再確認しました。
立川市民オペラの「愛の妙薬」。こちらも素晴らしい公演。アディーナを歌われた前川依子がとてもチャーミングで素晴らしかったし、工藤翔陽のネモリーノ、的場正剛のベルコーレ、岡野守のドゥルカマーラと適役でした。合唱も玄人はだし。オーケストラ以外は本当に大満足の公演でした。
Bocca del Monteの「セビリアの理髪師」。会場の音響は悪く、ピアノ伴奏公演でベスト10に入れるかどうか迷ったのですが、メンバーのチームワークがすこぶるよくてその推進力の素晴らしさはベスト10から外すわけにはいきません。岡坂弘毅、吉村恵、市川宥一郎、小野寺光、中畑有美子とみな素晴らしいパフォーマンスで見せました。
「シシリアの晩鐘」はノーカット上演が素晴らしい。バレエの振り付けは全然好みではないですけど、兎に角ノーカットで上演したことが意味ある事です。歌のほうは細かくはいろいろありましたが、デニス・ビシュニャのプロチダが本当に素晴らしく、須藤慎吾のモンフォルテ、石上朋美のエレナも素晴らしい歌唱。村上敏明が不調だったのが残念ですが、珍しい作品をあそこまでしっかり見せてくれたことは素晴らしいと思います。
濱田芳通/アントネッロによる「リナルド」は現代風の演出で好みがわかれるところだと思いましたが、音楽的にはとても素晴らしいものでした。チームワークの良さがあって、四人のカウンターテノールがそれぞれ特徴を出した歌で、見事だったと思います。
、大田区の「こうもり」は大田区ローカルの演出で、台詞が多く冗長ではありましたが、音楽的レベルが高く素晴らしいオペレッタとして仕上がっていました。日本を代表する歌手が何人もご出演されているから当然なのですが、素晴らしいものは素晴らしい。
最後に挙げるのは「ピーア・デ・トロメイ」。迫田美帆のピーアが素晴らしく、登場した時からフィナーレまで丁寧で、これぞベル・カントというべき歌唱を披露しました。全員が全員素晴らしいという感じではなかったのですが、ベルカントオペラの雰囲気はよく出ており、見事だったと思います。
さて、以上の演奏にも増して素晴らしかったどくたーTの選ぶ2024年のベスト3ですが、第三位は新国立劇場11月公演の「ウィリアム・テル」です。批判校訂版に従ったオリジナルフランス語版での日本舞台初演。大野和士の音楽づくりが素晴らしく、この傑作の本領をしっかり見せてくれました。そして大野の音楽づくりの基盤の上、ミシュケタのテル、ルネ・バルベラのアルノルド、安井陽子のジェミが見事な歌唱を披露しました。低音脇役陣も須藤慎吾、田中大揮、妻屋秀和とみな素晴らしく、齊藤純子のエドヴィジュも存在感のある歌唱を見せました。そして新国立劇場合唱団の素晴らしかったこと。合唱が特に重要なオペラなので、新国立劇場の高レベルの合唱が舞台をさらに盛り上げていました。
第二位は日生劇場の「連隊の娘」です。こちらは原田慶太楼のキレのいい音楽づくりと、粟國淳のポップで楽しい舞台が素晴らしい。トニオ役の小堀勇介が完璧なレッジェーロを聴かせました。BIS付きだったのがすごい。そのうえこれが実質的デビューというマリー役の熊木夕茉.。かなり緊張していて決して完璧ではなかったけど、全体として溌溂とした素敵な歌を聴かせてくれました。大器の片鱗を見せたということでしょう。脇役陣も適材適所で、こちらが一位でも全然違和感はありません。
そして今年の第一位は新国立劇場の初ベッリーニ作品である「夢遊病の娘」にします。私にとっては7回目の「夢遊病の女」でしたが、間違いなくこれまで聴いた最高の「夢遊病」。指揮のベニーニを中心に、オーケストラ、合唱、ソリストがしっかりかみ合った演奏をしていたことと、ロドルフォ、アミーナ、エルヴィーノ、リーザの四人が皆高レベルのパフォーマンスを示してくれたことがそう感じられた理由だと思います。特にアミーナを歌ったムスキオが格別に素晴らしい。まだ30前の若手ですが、ベルカントのテクニックは、もう完璧と言ってもいいほど。高音のコロラトゥーラの技術もさることながら中低音のしっとりした響きも素晴らしく、末恐ろしく思いました。
演奏会形式のオペラから選ぶ特別賞ですが、今年は東京交響楽団の「ばらの騎士」が聴けなかったので、片手落ちの感は否めないのですが、チョン・ミョン・フン指揮する「マクベス」は、マクベスとマクベス夫人にはもう少し人が欲しいとは思いましたが、音楽づくりは見事だったのでこちらにしましょう。
ベスト歌手は、バリトン井出壮志朗の活躍が著しかったので井出にしようかとも思ったのですが、「ファウスト」のマルグリートと「ピーア・デ・トロメイ」のピーア、そしてトスカでも素晴らしい歌唱を聴かせてくれた迫田美帆にします。井出は来年以降に期待しましょう。
さて、最後になりますが、今年のクラシック界での最大の訃報は小澤征爾の死去だったわけですが、日本のオペラ界に限定すれば、牧野正人さんの逝去が最も惜しまれることです。牧野さんは藤原歌劇団のプリモバリトンとして30そこそこから活躍されて、2021年のジャンニ・スキッキ役まで、バリトンの主要役で歌ったことがない役はない、というほど大活躍されました。どくたーTとは同年代で、私がオペラを聴き始めた時期と牧野さんがプリモになった時期がほとんど一緒で、最初に聴いた彼はチェネレントラにおけるダンディーニ。その後0年にわたって、彼の歌うフィガロ、ナブッコ、リゴレット、ジェルモン、マクベス、ファルスタッフ、レナート、アモナずロ、スカルピア、シャープレス、マルチェッロ、トニオ、ミショネ、バルナバなどを楽しんできました。まさに日本を代表する大プリモバリトンでした。その彼の功績をたたえて、特別賞という名前で彼を称えようと思います。
2024年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。
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