NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2010年(後半)
目次
2010年09月10日 第1679回定期演奏会 ネヴィル・マリナー 指揮
2010年09月25日 第1681回定期演奏会 ネヴィル・マリナー
指揮
2010年10月15日 第1682回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2010年10月22日 第1683回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2010年11月14日 第1685回定期演奏会 アンドレ・プレヴィン指揮
2010年11月19日 第1686回定期演奏会 マルクス・シュテンツ指揮
2010年12月04日 第1688回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2010年12月10日 第1689回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
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2010年09月10日 第1679回定期演奏会
指揮:ネヴィル・マリナー
曲目: | ベルリオーズ | 歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲 | |
シベリウス | ヴァイオリン協奏曲 二短調 作品47 | ||
ヴァイオリン独奏:ミハエル・シモニアン | |||
ベートーヴェン | 交響曲第7番 イ長調 作品92 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(前首席奏者の岡崎さん)、ホルン:松﨑、トランペット:客演、トロンボーン:栗田、ティンパニ:植松
弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型
感想
N響の新シーズンが、始まりました。今シーズンの冒頭を飾るのはネヴィル・マリナー。1924年生まれといいますから、御年86。それにしてはお元気です。高齢の指揮者が登場すると、音楽が硬化してしなやかさに欠けることが多いのですが、マリナーはそういう片鱗が見えなかったとは申しませんが、生気の溢れる演奏になっていたと思います。全体的にはなかなか良い演奏会で、シーズンの冒頭を華やかに飾りました。
最初に演奏された「ベアトリスとベネディクト」序曲は、あまり演奏されない作品ですが、マリナーらしい選曲だと思います。マリナーは、かつて「アカデミー室内管弦楽団」を率いていた時、歌劇の序曲や小品をよく録音しておりました。それだけに、彼のレパートリーの広さを示すにはうってつけの作品だということなのでしょう。演奏は、一言で申し上げれば元気の良いもの。演奏会の冒頭を飾るには、ふさわしいもののように思いました。
二曲目のシベリウスのヴァイオリン協奏曲にはロシアの若手ヴァイオリニスト、ミハエル・シモニアンが登場しました。まだ24歳とのことで、おじいさんと孫との共演という感じですね。若手、ということもあるのでしょうが、一寸とんがった、ケレンミの強い演奏をする方です。足でリズムをとりながら演奏していくのですが、結構広い範囲を動き回り、一寸目障りな感じでした。マリナーの持つテンポ感覚とシモニアンのテンポ感覚に微妙なずれがあり、そこが対立的でした。オーケストラとソリストとが、もう少しお互い譲り合った演奏をするのかと思いきや、お互いしっかり対抗していたところが面白く感じました。シモニアン自身はN響と掛け合う部分よりも、カデンツァなどソロで演奏する部分の方がのびのびしている感じがしました。
最後のベートーヴェンの7番。べらぼうに良い演奏だとは思いませんでしたが、音楽のアプローチが、第4楽章に向けて徐々に盛り上げていくやり方のため、観客には大いに受けていました。最初は遅めのテンポで、十分にためを作って演奏させていたのですが、だんだん速くなり、第4楽章のアレグロ・コン・ブリオは、怒涛のごとくの勢いでした。楽章間のつなぎも、ほとんどアタッカといってよいほど短いもので、そういうやり方で作品の一体感を作って行ったと申し上げてよいのでしょう。
マリナーの指揮は、腕の振りを見る限り特別流暢でもなく、年齢相応のぎこちなさが見えるのですが、出てくる音楽は結構瑞々しい。そういう様子を見ると、N響は長老指揮者に優しいな、と思います。名指揮者が振った演奏会であることは確かですが、そういう指揮者を盛り上げようとするオーケストラの姿勢が良かったと思いました。
2010年09月25日 第1681回定期演奏会
指揮:ネヴィル・マリナー
曲目: | シューマン | 序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52 | |
シューマン | ピアノ協奏曲 イ短調 作品54 | ||
ピアノ独奏:アンティ・シーララ | |||
シューマン | 交響曲第3番 変ホ長調 作品97 「ライン」 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、ティンパニ:久保
弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型
感想
伝統的にそうなのですが、N響ファンは、長老指揮者に優しいと思います。「ライン」交響曲が終わった直後の「ブラボー」の声と激しい拍手は、本日の演奏を批判的に見ている私にとっては、気恥ずかしいほどのものでした。あれと同じ演奏を若手の日本人指揮者がしたとすれば、観客にお許しを貰えるのでしょうか。凄く疑問です。
最初の「序曲、スケルツォとフィナーレ」。一言で申し上げれば凡演でした。特にいけないのがスケルツォ。タタターンというリズムが基本なのですが、そこに、スケルツォらしい刻みの深み、あるいは揺れが感じられないのです。だらっとした詰まらない演奏に終始しました。フィナーレも特に高揚する感じではなく、あっけない演奏でした。
ピアノ協奏曲。シーララというピアニスト、あまり上手ではありませんでした。私でも分かるようなミスタッチが何箇所もあることがまず気に入りません。又、演奏のスタイルが、リリシズムの仮面に隠されたケレン、という感じで、妙な作りこみを感じさせられる点で、私は支持できませんでした。シーララは、恐らく小さい音を繊細に演奏するのを得意とするピアニストなのだろうと思います。小さい音で演奏する時、その表情の多彩さが光ります。しかし、デュナーミクの幅が本質的に小さい方のようで、オーケストラと戦う感じがしません。ピアノパートはくっきりとしない様子で終始しました。
N響の演奏も今一つでした。ピアニストと指揮者の間でテンポ感覚の微妙なずれがありました。これもミスタッチの原因なのかもしれません。マリナーはオーケストラの音量を絞って、ピアノの音をくっきりと浮かび上がらせようと努力しておりましたが、あまり成功しなかった感じです。
ライン交響曲。音量は、最初の二曲とはうって変わり、大音量での演奏でした。こういう元気の良い演奏は私も好みなのですが、残念ながら、元気だけれども荒っぽい演奏でした。弦楽器奏者は、ボウイングに微妙なずれがあって、音が澄んできません。全体的に乱暴で、精緻な雰囲気を見出すことはできませんでした。そのためか、第三楽章の緩徐楽章は、ロマンティックな雰囲気に乏しく、第四楽章は荘重に、と書かれているにもかかわらず、一寸慌てているような雰囲気も見えました。恐らくマリナーの指示に対する解釈が楽員同士で微妙に異なり、その調整が付かずに本番になったのでしょうね。
2010年10月15日 第1682回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ
曲目: | ヴェルディ | 歌劇「アイーダ」(字幕付き原語上演、演奏会形式) |
エジプト王 | : | フラノ・ルーフィ(バス) |
アムネリス | : | セレーナ・バスク・アリーニ(メゾ・ソプラノ) |
アイーダ | : | アドリアーナ・マルフィージ(ソプラノ) |
ラダメス | : | サンドロ・パーク(テノール) |
ランフィス | : | グレゴル・ルジツキ(バス) |
アモナズロ | : | パオロ・ルメッツ(バリトン) |
エジプト王の使者 | : | 松村 英行(テノール) |
女祭司長 | : | 大隅 智佳子(ソプラノ) |
合唱 | : | 二期会合唱団 |
合唱指揮 | : | 河原 哲也 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:佐藤、ホルン:今井、トランペット:井川、トロンボーン:栗田、チンバッソ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保
弦の構成:16型
感想
サンティのN響定期公演におけるオペラ全曲は、2007年の「ボエーム」以来ということになります。あの「ボエーム」は、「ボエーム」という作品の構造が見通せる名演だったことは記憶に新しいところですが、3年ぶりに取り上げたのはヴェルディの「アイーダ」で、イタリアオペラを指揮する、古いスタイルの最後の大御所と言われるサンティの最も得意とすると言われている作品です。ちなみに、サンティが日本でアイーダを振ったのは今回が初めてではなく、1989年のアレーナ・ディ・ヴェローナの引っ越し公演、1995年の読売日響の定期演奏会に続く三度目です。
サンティの演奏は、ロマンティックな色彩の強い、テンポを動かす演奏です。思い切ったリタルダンドなど、手の内に完全に入った作品を演奏しているという印象でした。前回の「ボエーム」は、ある意味解析的な演奏だったのですが、今回の「アイーダ」は、よりオペラっぽい印象の強い演奏になっていました。それにしてもN響の演奏は見事です。演奏をする側としてはそれほど難しい作品ではないと思いますが、指揮者の指示に的確に反応して、オーケストラのケレンを見事に示していたと思います。また、個々のの方々の技量が凄いと思います。神田、甲斐、菅原のフルート陣、加藤さんのバス・クラリネットなどが特によく、サンティもかなり満足していたようでした。
終演後、舞台裏に引っ込んでいた女声合唱をサンティ自ら呼びに行って並ばせたところなどから見ても、いい演奏だったと思われていたのでしょう。
指揮・オーケストラの素晴らしさと比較すると、歌手陣はいまいちの方が多かった、と申し上げざるを得ません。まずいけないのは、マルフィージの外題役です。マルフィージの声質は純粋リリコで、アイーダのようにスピントの強い役柄には向かないと思います。更に調子も万全ではなかったようで、声が乾いた感じで、高音が浮いてしまい抑えが効かない様子でした。繊細な表現はそれなりにしっかりできていましたが、アイーダに期待される中声部のしっかりした声が出ておらず、満足できませんでした。
サンティ・マルフィージのコンビは何度も聴いておりますが、今回のマルフィージがこれまでで一番悪かったように思います。
アムネリスのバスクアリーニも今一つ。基本的にピッチがN響とずれていたようで、登場部分は微妙に音程がずれておりました。その後は修正しており、四幕一場の表現などは、ラダメスを翻意させることのできない王女の悲しみを良く表現しており、良かったと思います。
サンドロ・パークのラダメスは良かったと思います。最初の「清きアイーダ」は声を力任せに押す部分があって、必ずしも満足は出来なかったのですが、それ以外は上々。何しろ声が良いです。本来持っている響きが柔らかく、美しいのが魅力。第三幕、四幕の表現が見事でした。
男声低音陣は、皆結構でした。特に良いと思ったのは、フラノ・ルーフィのエジプト王。アモナズロのルメッツも力強い歌唱で悪くありませんでした。
特筆しなければならないのは大隅智佳子の祭司長です。非常に見事な歌唱で、落ち着いた声が素敵でした。マルフィージよりも大隅にアイーダを歌わせたかったです。恐らく、大隅とマルフィージの役柄を交換したほうが、演奏会としてはより成功したでしょう。
2010年10月22日 第1683回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ
曲目: | メンデルスゾーン | 交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」 | |
ドヴォルザーク | チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 | ||
チェロ独奏:堤 剛 |
オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京交響楽団の福士マリ子さん)、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:植松
弦の構成:14-12-10-8-7
感想
良しも悪しくも、サンティらしい演奏会でした。それが本日の魅力でもあり、欠点でもあったということだろうと思います。
「イタリア」はイタリア的演奏だったと思います。ヨーロッパの音楽を大くくりに申し上げると、対位法を音楽の中心におくドイツ音楽と、メロディーとカンタービレのイタリア音楽、という風に分けられると思うのですが、メンデルスゾーンという対位法のバックグランドの作曲家の作品を、イタリア音楽のように演奏しました。チェロやコントラバスによる伴奏をしっかり鳴らせてクッションを作った上に、メロディーラインを美しく響かせる。こういう見た目おおらかな演奏がサンティの真骨頂だと思います。「イタリア」でこのような演奏を聴いたことがなかったので、かなり新鮮に感じました。お客さんには賛否両論だったようで、演奏直後にBooが飛びましたし、一方熱狂的なBravoもありました。
一方、ドヴォルザークはいまいちだったと申し上げるのが正直なところです。ソリストとオーケストラの向いている方向が違うのです。堤剛のチェロは、かなり自由なもので、自在にチェロを操り、渋い音を響かせます。堤にはドヴォルザークはこう演奏すべきだという信念のようなものを感じ、例えば、カデンツァの演奏などはとても立派なものだと思いました。
しかし、オーケストラと合わせると今一つしっくりきません。これは、恐らく対位法の音楽とメロディーとカンタービレの音楽の対立なのでしょうね。堤の音楽はある意味内省的で、深く深く掘り進めて行くような音楽。渋い厳しさを感じます。一方サンティの目指すところは、もっと明るく開放的な音楽なのだろうと思います。サンティ/N響は、ソリストを尊重して合わせようとはしているのですが、基本的な向きが違うので、どこか波長がずれているのでしょう。私にはあまり感心できませんでした。
2010年11月14日 第1685回定期演奏会
指揮:アンドレ・プレヴィン
曲目: | 武満 徹 | グリーン | |
ガーシュイン | ピアノ協奏曲 ヘ調 | ||
ピアノ独奏:アンドレ・プレヴィン | |||
プロコフィエフ | 交響曲第5番 変ロ長調 作品100 |
2010年11月19日 第1686回定期演奏会
指揮:マルクス・シュテンツ
曲目: | マーラー | 交響曲第2番 ハ短調 「復活」 | |
ソプラノ独唱:クリスティアーネ・リポーア アルト独唱:アンケ・フォンドゥング 合唱:東京音楽大学 合唱指導:篠崎義昭、阿部純 |
2010年12月4日 第1688回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ
曲目: | ショパン | ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11 | |
ピアノ独奏:ユリアンナ・アヴデーエワ | |||
ストラヴィンスキー | 交響詩「うぐいすの歌」 | ||
ドビュッシー | 交響詩「海」 |
2010年12月10日 第1689回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ
曲目: | ブリテン | 戦争レクイエム 作品66 | |
ソプラノ独唱:タチャーナ・パヴロフスカヤ テノール独唱:ジョン・マーク・エンズリー バス独唱:ゲルト・グロホウスキ 合唱:東京混声合唱団(合唱指揮:松井慶太) 合唱:NHK東京児童合唱団(合唱指導:加藤洋朗) |
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